【不動産】敷地に面する私道を通行する権利
2018年5月13日
敷地の前面道路が公道ではなく私道である場合,その私道を通行することができるかについては,不動産を購入するか否かの判断に重大な影響を及ぼす事情です。
宅地の場合,当該私道が建築基準法上の道路に該当し,当該私道によって接道義務が充足されている場合も多いようです。
私道の通行権については,なかなか理解が難しいためか,インターネット上に正確な情報が少なく,いたずらに不安をあおるような記事が散見されますが,私の経験上,宅地として売買されるような土地については,特殊な場合を除き,ほとんどの場合,通行権が認められるであろうケースが多いです。
もっとも,例外はありますので,実際の売買にあたっては,必ず専門家に相談してください。
以下,簡単にご説明します。
私道が,特定行政庁による位置指定などにより,建築基準法上の道路とされた場合,道路内への建築物や擁壁の建築,私道の変更,廃止は制限されます(建築基準法44条,45条)。
もっとも,同法は,近隣住民等に私道の通行権を認めるものではなく,道路所有者によって通行が妨害された場合,行政庁の職権発動を促したり,処罰を求めたりすることはできても,直ちに,道路所有者を相手取って妨害の排除を求めることはできないものとされています(東京高裁昭和40年5月31日判決等)。
ですから,私道が,建築基準法上の道路に該当するからといって,必ずしも,近隣住民等の通行権が認められるわけではありません。
近隣住民等の通行権については,①建築基準法上の私道について,②道路が現実に開設され,③通行が日常生活上不可欠であり,④私道敷地の所有者が,通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情がない場合に,敷地所有者に対して,妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利が認められるものとされています(最高裁平成9年12月18日判決,最高裁平成12年1月27日判決)。
また,一筆の土地を分譲する際,通路を利用する譲受人に対してのその通路敷所有権を分割帰属させる場合や,通路敷所有権をもとの分譲者に留保した場合には,黙示の通行地役権設定が認められ(東京高裁昭和49年1月23日判決),土地購入者には私道を通行する権利が認められます。
元の所有者が,問題なく私道を通行して居住していた場合には,上記いずれかの権利が認められる場合が多いと思われます。
もっとも,法的な通行権が認められるとしても,私道の所有者が通行に異議を述べるなど,現にトラブルが存在する場合には,宅建業者は説明義務を負います。
そのような場合には,私道の所有者に対して,法的な通行権の存在を説明し,事前にトラブルを解決するよう努める必要があるでしょう。