2019年5月24日
最近,よくご相談いただく内容として,企業内部の経営権を巡る争いがあります。
ビジネスパートナーと共同で会社を設立する場合,多くの方が,まさかパートナーと揉めることなどないだろうと考えます。わざわざ揉めそうな人と事業を始める方もいませんからね。
ところが,他人同士が一緒にいると,経営方針や考え方違いのために仲違いしてしまうことは少なからずあります。
そのような場合,特に少人数で始めた会社では大きな問題が生じます。
例えば,二人で合同会社を設立した場合,業務執行の決定は,定款に特段の定めがない限り,二人の社員の過半数によって行われます(会社法590条2項)。そのため,実際には二人の意見が一致しない限り業務執行に関する決定はできないことになり,二人が仲違いして話し合いができなくなると,業務執行の決定が全くできなくなってしまいます。
仮に,単独で業務執行を行った場合,損害賠償責任等を問われる可能性があります。
このような場合に備え,特定の業務執行の決定については,定款で代表社員に委任したり,協議が整わない場合の定めを置くなど,事前の制度設計が必要です。
株式会社を,半々の出資で設立した場合などにも同じような問題が起こり得ます。
会社設立に当たって,紛争に備えた定款作成,株主間契約などができればベストですし,定款変更や株主間契約は,会社設立後も可能です。できれば,揉める前にご相談ください。
2019年4月15日
企業のホームページには,ほぼ例外なく「プライバシーポリシー」または「個人情報保護方針」というページが設けられていますが,これ,何のためにあるかご存知でしょうか?
もしかすると,自社のホームページにそのようなページがあることもご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし,実は,「プライバシーポリシー」または「個人情報保護方針」は,とても大切です。
みなさんご存知の個人情報保護法は,個人情報を取得した事業者に,利用目的の本人への「通知」または「公表」を義務付けています(個人情報保護法18条1項)。
とはいえ,企業が個人情報を取得した場合に,その都度,本人に利用目的の通知を行うことは現実的ではない場合があり,個人情報の利用目的を「公表」する方法として,ホームページの「プライバシーポリシー」などが利用されています。(※但し,本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならないものとされており,公表のみでは足りません。この点については別稿でご説明します。)
また,他社との間で顧客情報の共同利用が予定されている場合,例えば,グループ企業の顧客にダイレクトメールを送るような場合にも,個人データの共同利用を行うことなど一定の事項を,予め「本人が容易に知り得る状態」に置くことが必要とされており(個人情報保護法23条5項3号),これも,ホームページへの記載によって行われています。
そのほかにも,個人情報の第三者提供禁止の例外規定(個人情報保護法2項等)の適用を受けるための記載事項などがありますが,
プライバシーポリシーへの最低限の記載事項としては,
● 取得した個人情報の利用目的
一般的には,顧客との契約の履行や,アフターサービス,当該企業のサービスに関する情報の提供など。
関連会社などとの共同利用が予定されている場合には,
● 個人データが特定の者に提供されること
● 共同して利用される個人データの項目
● 共同して利用する者の範囲
● 利用する者の利用目的
● 当該個人データの管理について責任を有する者
となります。
その他にも,個人情報保護のための社内体制,保有個人情報の開示手続などについて具体的な記載をしている例もありますが,必ずしも必要ありません。個人情報を取り扱う専門部署があるような大企業ならともかく,中小企業においては,あえてホームページで言及する必要はないでしょう。
2018年10月15日
前回の投稿「顧問弁護士との関わり方」を書いた後に,懇意にしている経営者の方とお話をしていて,もう一つ大切なことを思い出しました。
顧問弁護士には,「法律に詳しい従業員」としての顔とともに,「社長に対してもNOと言える第三者」としての顔もあります。
弁護士は,たとえ依頼者といえども,法令に違反する行為を容認することはできません。
また,たとえ顧問先の社長であっても,指揮命令を受ける立場にはありませんので,従業員とは異なる独立した立場で意見を述べます。
経営者は,時に孤独です。従業員には相談できない問題や,経営者仲間にも相談しづらい問題もあるでしょう。そういう時に相談できるだけの関係を,顧問弁護士との間で築くことができれば,顧問弁護士はより頼もしい存在になるはずです。
そのためには,顧問弁護士側でも研鑽が必要です。
顧問弁護士との関わり方
2018年10月11日
先日,新たに顧問契約を締結していただいた不動産会社様を訪問してきました。
社長以外の従業員の方々とお会いするのは初めてでしたので,ご挨拶をさせていただき,いろいろとお話をさせていただきました。
今回の企業様は,弁護士と顧問契約をされるのが初めてということで,従業員の方々が,どのように顧問弁護士と関わればよいのかわからないという,大変よいご質問をいただきました。
これについては,法律に詳しい新しい従業員が増えたと考えてくださいとお答えしました。
業務の中で法律問題に直面した時,よくわからないまま不安な気持ちで対応したり,専門家に聞けば5分で解決する問題のために何時間も費やして調べるのをやめれば,業務のストレスは減り,サービスは向上し,生産性も大幅にアップします。
そのために顧問弁護士がいますので,早めに,気軽に,電話やメールで相談していただきたいと思います。
社長のお人柄か,従業員の皆さんの雰囲気も大変よく,今後ますます発展される企業様と確信しました。顧問弁護士としてしっかり応援して行きたいと思います。
顧問弁護士との関わり方2
2018年9月17日
経営者からのよくあるご相談の一つとして,「勤務態度の悪い従業員を解雇したところ,弁護士から解雇無効を主張する通知が届いた。」というものがあります。当事務所の顧問先には,そのような解雇はさせませんので,普段お付き合いが無い経営者からのご相談に限られますが。
このような場合,当該従業員がよほど酷いことをした場合を除き,経営者にとってかなり厳しい交渉とならざるを得ません。
事情をお聞きすると,従業員に相当問題があり,「それは,ずいぶん我慢しましたね。。。」という場合が大半です。
しかし,この,「我慢」が問題なのです。
経営者の我慢は,「よく我慢した」とほめてもらえることは無く,基本的に,「いままで問題視していなかったのに,突然解雇した」と評価されます。
これを避けるために重要なのが,適切な懲戒処分です。
懲戒処分には,戒告,けん責,減給,出勤停止,諭旨解雇,懲戒解雇などがあります。
懲戒処分の内容や,懲戒処分の理由となる懲戒事由は,それぞれの企業の就業規則で定められており,就業規則で定められていない懲戒処分はできません。
また,定めるだけでなくて,周知(従業員が見たい時に見ることができる状態に置くこと)がされていなければなりません。
貴社の就業規則にはどのような懲戒事由や懲戒処分が定められているか,また,従業員がいつでも就業規則を見られる状態にあるか確認してください。
そのうえで,勤務態度に問題があり,懲戒事由に該当する従業員に対しては,我慢せずに,直ちに戒告やけん責など軽い方の処分を下してください。
比較的悪質性が高い場合には,減給や出勤停止も選択肢です。逆に,懲戒事由に該当するとまでは言えない場合は,書面による厳重注意でも構いません。書面による証拠を残すことが重要です。
横領など犯罪に該当するような場合は別ですが,解雇は,以上のような軽い懲戒処分を重ねても改善されない場合に行うものと考えておくのが無難です。
問題がある従業員がいる場合は,我慢せず,早い段階で弁護士に相談し,中長期的に対応を検討するのがお勧めです。