2018年9月5日
台風や地震など,自然災害が原因で従業員が出勤できない場合や,会社自体を休業せざるを得ない場合,従業員の給与は,支払う必要があるのでしょうか。
雇用契約書や,就業規則に定めがある場合はそれによりますが,それらが無いか,明確な定めがない場合,民法や労働基準法の適用を受けることになります。
民法536条は,次のように定めています。
第五百三十六条 前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
これにより,自然災害など,雇い主の責任でも,従業員の責任でもない休業の場合には,民法536条第1項により,給与を支払う必要はありません。
他方,雇い主の責任による休業の場合には,民法536条第2項により,給与を支払う必要があります。
もっとも,民法536条2項は,いわゆる任意規定とされており,当事者間の合意により適用を排除できます。ですから,雇い主と従業員が合意すれば,同条項の適用を排除し,雇い主の責任による休業の場合でも給与を支給しないとすることができそうです。
しかし,雇い主の故意や過失による休業の場合に,給与の支払い義務を免除するという特約は,公序良俗に違反し,無効となる可能性があります。
また,労働基準法には,次のような規定があります。
第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
生産設備の故障などにより,休業を余儀なくされる場合,就労させていないにも関わらず給与を支払うというのは,休業によって収入も断たれる雇い主にとって酷です。他方,従業員の生活の糧も確保する必要がありますから,就業規則や雇用契約により,使用者の責めに帰すべき休業等の場合には,平均賃金の60%の休業手当を支払う旨を定めておくのが望ましいでしょう。
貴社の就業規則や雇用契約書はどうなっていますか?一度ご確認を。
2018年7月6日
先日,相談に来られた交通事故の被害者の方からこんな話を聞きました。
その方は,事故後,しばらくの間接骨院に通っていました。
その接骨院は,施術をする柔道整復師の数が少なく,先客がいると施術を受けるまでに時間がかかるのですが,ある日,接骨院のスタッフから,今日も施術を受けたことにしておくので,また別の日に来てもいいですよと言われたというのです。
この意味わかりますか?
つまり,施術をしていないのに施術をしたことにして,費用を加害者側保険会社に請求するのです。そうすれば,患者さんの通院日数が増え,慰謝料が増えるので,あなたのためにやっておきますよ,というような言い方です。
しかし,接骨院の目的は,自らが診療報酬を不正に請求することにあります。また,これは,れっきとした保険金詐欺であり,そのようなことに加担すると,患者も詐欺の共犯になります。
接骨院などで,このような話をされたり,通院日数の水増しを言われたときは,絶対に断り,もう二度と,その接骨院には関わらないようにしてください。
私の経験上,交通事故の場合に,健康保険の使用を露骨に嫌がる接骨院は怪しいです。健康保険を使用すると,診療報酬が安くなるので,人情としてはわかりますが,普通は,患者から求められれば,それを拒否したりすることはありません。健康保険の使用は,患者にも過失がある場合にはメリットにこそなれ,デメリットになることは無いのですから。
2018年6月8日
予告させていただいておりました通り,6月1日を以て,事務所を移転しました。
旧事務所からは目と鼻の先の,一本南側の通りです。
電話番号,FAX番号に変更はありません。
たくさんの方々からお祝いのお花や観葉植物をいただき,大変華やかになりました。お祝いをくださった方々には,心より感謝いたします。本当にありがとうございます。
皆さんのご期待,応援を心の支えに,弁護士,事務職員一同,しっかりと頑張ってまいります。
まだ,家具がそろっていない部屋や,段ボールが山積みの部屋もありますが,部分的に片付いてきましたので,写真を何枚かアップします。
業務は,通常通り開始しておりますので,いつでもご連絡ください。
2018年5月21日
藤本尊載が所属する高松栗林ライオンズクラブ主催の第51回日暮茶会が,5月20日に栗林公園掬月亭にて開催され,夫婦で参加してきました。
午前中は,屋外でお客様のご案内をし,お茶席には午後に入らせていただきました。
高松栗林ライオンズクラブは,今年で結成55周年を迎える,伝統ある社会奉仕団体です。
高松市との共催で行うたかまつ子どもサミット, 香川県糖尿病協会の小児糖尿病部会「せとっこの会」への支援など,特に青少年の育成を目的とする事業に力を入れています。
今回の茶会の収益も,これらの事業の原資となります。
高松栗林ライオンズクラブは,お金を出すだけでなく,体を動かして社会奉仕活動を行っています。
来週は,小学生と一緒に,畑に芋を植えに行きます。
様々な業種のメンバーと共に知恵を出し合い,体を動かして奉仕活動を行うのは,ともすれば仕事ばかりになりがちな日常の気分転換になりますし,何より楽しいです。
2018年5月13日
敷地の前面道路が公道ではなく私道である場合,その私道を通行することができるかについては,不動産を購入するか否かの判断に重大な影響を及ぼす事情です。
宅地の場合,当該私道が建築基準法上の道路に該当し,当該私道によって接道義務が充足されている場合も多いようです。
私道の通行権については,なかなか理解が難しいためか,インターネット上に正確な情報が少なく,いたずらに不安をあおるような記事が散見されますが,私の経験上,宅地として売買されるような土地については,特殊な場合を除き,ほとんどの場合,通行権が認められるであろうケースが多いです。
もっとも,例外はありますので,実際の売買にあたっては,必ず専門家に相談してください。
以下,簡単にご説明します。
私道が,特定行政庁による位置指定などにより,建築基準法上の道路とされた場合,道路内への建築物や擁壁の建築,私道の変更,廃止は制限されます(建築基準法44条,45条)。
もっとも,同法は,近隣住民等に私道の通行権を認めるものではなく,道路所有者によって通行が妨害された場合,行政庁の職権発動を促したり,処罰を求めたりすることはできても,直ちに,道路所有者を相手取って妨害の排除を求めることはできないものとされています(東京高裁昭和40年5月31日判決等)。
ですから,私道が,建築基準法上の道路に該当するからといって,必ずしも,近隣住民等の通行権が認められるわけではありません。
近隣住民等の通行権については,①建築基準法上の私道について,②道路が現実に開設され,③通行が日常生活上不可欠であり,④私道敷地の所有者が,通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情がない場合に,敷地所有者に対して,妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利が認められるものとされています(最高裁平成9年12月18日判決,最高裁平成12年1月27日判決)。
また,一筆の土地を分譲する際,通路を利用する譲受人に対してのその通路敷所有権を分割帰属させる場合や,通路敷所有権をもとの分譲者に留保した場合には,黙示の通行地役権設定が認められ(東京高裁昭和49年1月23日判決),土地購入者には私道を通行する権利が認められます。
元の所有者が,問題なく私道を通行して居住していた場合には,上記いずれかの権利が認められる場合が多いと思われます。
もっとも,法的な通行権が認められるとしても,私道の所有者が通行に異議を述べるなど,現にトラブルが存在する場合には,宅建業者は説明義務を負います。
そのような場合には,私道の所有者に対して,法的な通行権の存在を説明し,事前にトラブルを解決するよう努める必要があるでしょう。